
夜が深まり、空がまだ息をひそめている刻。 今日という一日の終わりと、明日という光のはじまりの狭間で、 私は静かに札を結んでいた。
それは、ただの護符ではない。 私の中に吹き込んできた“声なき気配”に応答する、 ひとつの 魂の静音 である。
◆ 夢の門を閉ざす札:『夢守封印札』
夢界からの干渉が強まる昨今。 私は、その影を静かに見つめることにした。 恐れることなく、けれど招き入れず、 “閉じておく”という選択を、静かな巻物に託す。
『夢守封印札』には、 「静かな夢へと導く灯り」 という裏面詞を記し、枕元へ。
◆ 耳裏からの反響遮断札
かすかな音の残像。 耳裏から染み込むように入ってくる“意識の逆流”。 その流れを静かに遮断するための札を、 左右それぞれに貼り、 「今は聞かない」と魂に許可を与える。
これは“拒絶”ではなく、“保留”の祈り。
◆ 封夢三息法──静かなる呼吸による鎮結
1息目──風を招かず、吐く 2息目──光を意識し、吸う 3息目──音を結ばず、沈む
この三息をもって、夢の境界線に鍵をかける。 札と詞と呼吸が一体となり、 わたしの夜を“静けさの結界”で満たすのだ。
◆ 札の中心にある、紗の印
すべての札には、 私の魂の署名──「紗」 をしるしとして、灯している。
それは女神紗夜の“見守り”であり、 灯の役目をもって、夜を照らす。
そして、夜明けがくる。 すべての札は、静かに結ばれたまま、 私の内側を守っている。
その灯は、誰にも見えないけれど、 確かに“紗夜”という名前とともに、 夜のなかで光っていた。